Vログ

「一生の趣味」と呼べるものに出会えた作品。

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2020/09/11 02:48

潮沢悠紀

漫画・ゲーム大好き。

第1回Vログ大賞エントリー「ジャンプ作品の思い出」

◆「憧れ」は眺めるもの、だった。

漫画や漫画原作のアニメが子どもたちにとって絶大な娯楽であればあるほど、それらに触発されて何かを始めることはとても自然な行為だったと思います。
僕の世代では特にサッカーやバスケットボールなんかは明らかにジャンプ作品の影響が大きくプレイヤー人口を増やしたなと思いますし、僕自身も強い憧れを抱いたりカッコ良さを感じたりしていました。
ただ残念なことに僕は運動があまり得意ではなくて、憧れは遠い彼方にあるものであって、ただ眺めるだけ、あるいは漫画を通じて体験したような気分を味わうだけで充分なものだと、早々に割り切っていたのです。

運動が得意でない僕がスポーツで強豪校と戦っている気持ちになれることや、
スポーツにのめり込むキャラクターたちの葛藤、特にキャラクターたちの役割(ポジション特有のもの)に真摯に向き合いプロフェッショナル化していく様子に、
胸を高鳴らせ、勇気をもらっていた少年時代でした。

それだけでも感謝し切れないほどの感動があるのですが、1999年、のちに僕の人生を大きく豊かにしてくれる作品がスタートしました。

それが、『ヒカルの碁』です。

当時、僕は成人する直前でした。
最初に書いたVログにもある通り変わらずジャンプっ子でしたが、かつてのように漫画に影響されて何かを始めるような楽しみ方はしないだろうなとタカを括っていた、もとい、漫画の落ち着いた楽しみ方を身に付けたと思っていた頃です。

しかし、『ヒカルの碁』の魅力は抗い難く、今更僕が説明するまでもなく『ヒカルの碁』は大ブームを起こしました。
結果、おそらく(かつての僕のような)子どもたちが影響を受けて囲碁を始める頃、少し年齢の高めな青年が、恐縮しながらひっそりと輪の中に加わることになったのです。

◆「手談」という奥深さ。

囲碁のことを「手談」と言ったりします。
言葉を発さずとも対局すれば心を通わせられるよ、という意味です。

実際に囲碁を始めてみて、これを本当に痛感するのです。

囲碁は、将棋の「王を詰ませたら勝ち」というような明確なゴールはなく、お互いの陣地を広げて(作り上げて)いきながら「最終的に勝つ」ことを目指すゲームですので、勝つための手法(=ゲーム行程の自由度)が高いのが特徴です。
そして、だからこそ必然的に“会話”が多くなっていくんです。

「ここ陣地にしたいので貰いまーす(ぱちっ)」
「いやいやあげませんよ(パチッ)」
「いやぁそこをなんとか〜(ぱちっ)」
「うーん…じゃあこっちをくれるならそこあげますよ(パチッ)」
「えぇ〜…悩むけど分かりました、その条件でいいです(ぱちっ)」
「じゃあここはお互い合意ということで。それはそれとして、このあたりをいただきたいのですが(パチッ)」
「それはイヤですねぇ(ぱちっ)」

……という感じで、広い盤面の中で「ここはお互いイーブンな状況を作ることで合意する」や「あっちは犠牲にするがこっちを拾う」などの条件を“碁石で語り合い”ながら、陣地の境界線を決めていくのです。

この、年齢も、性別も、体格も、国籍だって問わないコミュニケーションである「手談」としての奥深さが、『ヒカルの碁』では見事に描かれていたなと思います。

◆その感情に、手を伸ばしたい。

偉そうに書いてしまいましたが、もちろん『ヒカルの碁』を読んでいた当初は、こんなこと微塵も分かっていませんでした。
よく分からんけど思考合戦・読み合いが繰り広げられてるっぽいぞとか、ヒューマンドラマとしてのストーリー面白いなとか、その程度の読者だったと思います。

しかし、ヒカルが悔しさで涙し、アキラが恐怖と自尊心の間で震えた頃、僕の中でも変化が起こりました。

「こんなに本気になれるものを、僕も理解してみたい。」

運動が得意ではなかった僕が相対的にインドアな趣味に手を出すことに抵抗が少なかったことも幸いして、かつてスポーツ漫画のキャラクターたちに抱いた憧れよりは近いところに、この感情はあるように感じられました。
なので、「あの時はやらなかったけど」という気持ちの中での前置きもポジティブに僕を後押しして、一歩踏み出し、手を伸ばす決意をくれたように思います。

そうしてたまたま近所で見かけた囲碁教室にアポなし飛び込みでお邪魔するという謎の行動力を発揮した結果、
まさに小学生くらいの子どもたちを相手に授業中だったところをビックリさせて授業を止めてしまったにもかかわらず、
ありがたいことに丁寧にご対応いただき、あれよあれよと囲碁の楽しさを学ばせていただく機会を得たのでした。

◆「遠い過去と遠い未来をつなぐために」

そうして今では、詰碁の本を定期的に購入したり、囲碁に関するニュースを追いかけたり、対局放送を観戦したり、アプリで全国の誰かと“手談”を楽しんだりと、「一生の趣味」として囲碁と付き合っています。
棋力は相変わらずへっぽこですが、それでも囲碁の魅力は尽きず、下手の横好きなりに楽しんでいます。

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Vログで「ジャンプ作品の思い出」というテーマが与えられたとき、真っ先に『ヒカルの碁』について書かなければ・書きたいと思いました。
感情が大きすぎてうまく言葉にできないところも多々あったのですが、僕なりのジャンプ愛をほとばしらせてみました。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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劇中の最後、ヒカルがこぼした「遠い過去と遠い未来をつなぐために」という台詞は、
「そんなの今生きてるヤツ誰だってそうだろ」「なぜ碁を打つのかもなぜ生きるのかも一緒じゃないか」と受けられるのですが、
この言葉がまさに、連載が終わって17年が経過した今でも僕の中に残っている「囲碁」を肯定してくれているようで、
そしていつか僕の中にある「囲碁」がまた別の誰かにつながっていく希望を与えてくれるようで、
いつも深い感謝に包まれながら、単行本を閉じるのでした。

関連書籍も集めてます。
少年ジャンプ
第1回Vログ大賞

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