ジャンプ派 VS コミックス派
全国のコミックス派のみなさん、本当にごめんなさい。最近の『チェンソーマン』の祭りにどうしても参加したすぎて、18年間在籍していたコミックス派から、ジャンプ派へ転向することをこの場で釈明させていただきます。全部あの女、マキマ(さん)が悪いんです。
そもそも、僕が『チェンソーマン』に出会ったのは、漫画好きの友達から
「1話だけでいいから読んで!あまりにも最高すぎて人生で初めてAmazonのレビューを書いてしまったくらいだから!」
と度を越したレコメンドをもらったからだった。それ以来、まんまとチェンソーマンのファンになってしまった。
ただ問題は僕がコミックス派だったため、最近の「月曜0時の祭り」に全くついていけなかったことだった。毎週Twitterトレンドに上がる #チェンソーマン のタグを見て、ぐぬぬと最新巻を涙で濡らす日々。もうおかげさまで『チェンソーマン』の8巻は10回ほど読み直してしまった。ハロウィンハロウィン!
でも、悲しい哉、もうTLは誰もハロウィンなんて言っていない。これが現実である。コミックス派はいつの時代も祭りのあと。我々が一人孤独に祭りを謳歌しているとき、奴らはすでに次の祭りを謳歌しているのだ。ブッダよ、聞け、これが現代の諸行無常ぞ。祇園精舎のギギガガガ、諸行無常のグギギギガガグギ!
コミックス派はもう二度とジャンプに追いつけない
なんでいつの時代もジャンプ派の奴らはこうも生き生きとしているのだろうか。一言でいえばジャンプ派は品がない。物語とは各話がつながって初めて意味を成すのだ。一週間前に読んだ内容なんて忘れているだろうに、まるで回転寿司で着座と同時にたまごを取るみたいにキャッキャッと毎週TLを騒ぎたておって!許さん、許さんぞ、「白身→赤身→光り物」が美味しいのに!もっとお行儀よくチェンソーを食せないのだろうか君たちは!ああもう俺だって、何も考えずにバニラアイスを注文したいのに!
コミックス派を貫いて18年。『ONE PIECE』だって『HUNTER×HUNTER』だってコミックスで読んできた。どんだけクラスのあいつらが、やれエースが死んだネテロが死んだと、騒ぎ立てようと、頑なに拒否し続けた。時にはネタバレという名の流れ弾に当たりながらも、「ジャンプ派は編集部から嘘をつかまされている阿呆で、コミックスが正史。アイツらの言うことは絶対に信じたらあかん」とコミックス派で徒党を組み、傷を慰めあってここまで生きてきた。
そりゃ、俺だって心移りしたときだってあったさ。なんでジャンプの話題になったら耳をふさいで、ネタバレをしようもんなら100%の敵意を友達に向けないといけないのかって。そんな生活、漫画くらいしかこの世に救いのない、男子中高生に耐えられるはずがない。
そうよ、何度も学校帰りのファミマで一人今週のジャンプを手にとった。でも、その度に気づくんだよ、もう俺はダメなんだってことに。わからないんだ、話が全然。グリムジョー・ジャガージャック、誰なんだよお前は(涙目笑顔)。
そして、同時に気づく。もう手遅れだということに。一度開いてしまった溝はもう埋まらないんだ。俺が今からジャンプを買ったとしても、コミックスの最新話からの差分がどうしても空いてしまう。
これが少年ジャンプが俺たちに仕掛けた「時空トラップ」だと気づくにはあまりにも簡単すぎた。コミックスを選んだ時点ですでに俺たちは敗北が決定していて、ジャンプというのは一度乗り遅れた奴を二度と追いつきはさせない仕組みになっているのだ。
ジャンプと同じ時間を歩むためには、失われた空白の物語を抱えて生きるしかない。グリムジョー・ジャガージャックが何者かわからないまま、破面編を読み進めるしかないのだ。そんな殺生な読み方、物語に対して上質に味わうしかない舌を持ってしまった元コミックス派ができるわけ……(絶句)
つまり、初めから俺たちはジャンプにしてやられているのだ。
そして、地獄へ
そんな『チェンソーマン』と自分との間に存在する埋まらない永遠の距離、祭りへの憧れを友達に熱弁していると、友達は「電子版のジャンプを読めばいいじゃん、バックナンバーも買えるよ」と呆気なく返してきた。
電子版……だと……。それはそれは魅力的なサービスだった。
DLが完了するまで計約30秒。18年の時を超えて、ついにジャンプと自分との間にある永遠の距離に橋が架けられた瞬間であった。
その時の自分は寂しさが勝った。あまりにも、トレンド欄の #チェンソーマン が輝いて見えていた。小学生の頃、給食の献立表に半年に一度書かれてあった「グラニュー糖パン」くらい輝いていて、待ち遠しかった。コミックス派なんて何のアイデンティティにもならない、仮初めの器に身をやつすよりも、この一生に二度とないTwitterでのチェンソーマン祭りに参加した方が絶対いい。皆と一緒に血みどろになりたい!俺は心置きなくマキマさんとパワーちゃんのファンアートが見たいのだ!
というわけで、電子版のジャンプを買い直し、この度タイムトラベルを図って最新話にたどり着いた。
これはそのときの感想である。
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