太一たちのその後を、保護者のような気持ちで見守る
『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆(以下、ラスエボ)』は、2020年2月21日に公開された劇場用作品です。1999年放送のTVアニメ『デジモンアドベンチャー(以下、無印)』から続くシリーズの、名前のとおり“LAST”を飾るべく作られたタイトルでした。
シリーズとしては1999年の無印、2000年放送の『デジモンアドベンチャー02(以下、02)』とTV作品が2作、その後2015年~2018年に劇場公開もされたOVA展開『デジモンアドベンチャー tri.(以下、tri.)』と続きました。
元々、02の最終回では25年後の未来を描いたエピローグが存在しており、tri.やラスエボはそこに至るまでの答え合わせのような意味合いがある作品です。ところが、tri.劇中ではエピローグの未来に繋がる描写はほとんどなく、単体作品としてはともかくシリーズの間を描く内容として観た場合に違和感のある作りであったことは否めません。
ラスエボはそんなtri.からエピローグへの繋がりを描く架け橋のような作品として、題材に正面から向き合ったタイトルです。太一たちの将来への不安、葛藤を描き、当時TVを観ていた同世代の視聴者が、今度は彼らの行く末を保護者のような気持ちで見守る作品でした。
懐かしさと新しさ
ラスエボはとても過去シリーズへのリスペクトに溢れた作品です。冒頭から流れ始めるボレロ、東京に出現するパロットモンとのバトル、劇中を彩る過去作BGMのアレンジ……。そうした、観て聴いて懐かしくなるファンサービスに溢れた構成になっていました。tri.では出番のなかった02キャラたちの成長した姿を見せてもらえるのも、非常に嬉しいものがありました。
一方で、ラスエボ独自の「大人になるとパートナー関係が解消される」という設定を起点とした物語や、一から描き直されたグレイモンやメタルグレイモンの進化バンクなど、懐かしさの中にも様々な新要素をみつけることができました。
ファンに喜んでもらえる懐かしい要素やリスペクトは忘れず、作品のテーマをハッキリと持って独自の内容を魅せる。ラスエボの構成は従来のファンを納得させるだけの“熱量”を持って届けられ、事実大きく評価された作品だと思います。
描ききれなかった余白を良しとするか
多大なリスペクトの下で作られたラスエボですが、一方でシリーズを知り尽くした私のような“煩いファン”には納得し切れないこともあったのは事実です。
まず、独自設定であるパートナー関係の解消。02のエピローグで描かれたとおり、ラスエボより後の未来で太一とアグモンたちが共に生活している様子が描かれています。なので、ラスエボのテーマでもあるこの内容はその後の未来で否定されているものに他なりません。ラスエボの終わり方として「その後の未来で再会できる」という“余白”を残しているものの、作中で描かれなかった要素としてモヤモヤする部分でもあります。
同じように、太一たちの職業についても気になる要素が残っています。ミミは02のエピローグで「料理研究家」になっている姿が描かれていますが、ラスエボではアパレルブランドを立ち上げており、両者の職業に接点はありません。
これについてラスエボでもアドバイザーとして携わる関弘美プロデューサーは「同じ職業で居続ける人ばかりではない」ということを話しているものの、フィクションの作品としては“何があったのか”を描いて欲しいというのが本音です。
ラスエボは一本の映画ということもあり、決められた尺の中で描かれるものです。気になる要素をすべて拾うことは難しく、どうしても気になる枝葉が省かれているのは間違いありません。タイトルに「LAST」と書かれているのは確かですが、叶うならば次のタイトルに繋がって欲しいところです。
まとめ
デジモンアドベンチャーという一連のシリーズの中で、ラスエボを受け入れるかどうかは非常に難しいタイトルです。02のエピローグや設定を思うと飲み込みきれない内容もありました。
ですが、作品自体のクオリティは疑いようもなく、今の技術で描かれる作画や演出の数々は一つの映画としても大変満足できる内容になっていました。
語るべきところや想いがたくさんあるタイトルではありますが、Blu-rayで何度も観て理解を深めていきたいと思います。
まずはこの作品を作ったスタッフ・キャストの皆さんに感謝し、今後のデジモン展開に期待して締めたいと思います。
ちなみに、9月26日にみんなでラスエボを観る同時視聴配信を実施します。
映画本編の映像や音声は流れないので、各自Blu-rayやDVDを購入していただくか、レンタルDVDなども開始しているようなのでぜひお手元にご用意して、一緒に楽しんでいきましょう。
という宣伝を最後に残して、今回はここまでです。
ほなまた!
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